サル慰霊祭

10月8日夕方、サル慰霊祭がありました。

宗教色を排したシンプルな式で、所内の「サル塚」に供えられた供物、献花台の前に集まった参列者が、1輪ずつ白い菊の花を手向けて合掌します。現場から作業着のまま駆けつける職員もいて、皆カジュアルな服装ですが、手を合わせ黙祷するときは、自ずから姿勢を正し神妙な表情になります。

動物園、研究機関と所属が変わる中、どこでもごく当たり前の行事と思って参加してきました。生き物を相手にする仕事には、その生老病死に接する経験がつきものです。現場では科学的に、迷いのない手技で職務を全うしている職員たちが、年に一度、失われた命の重さを振り返り、一層の精進、社会への成果還元を誓い合う儀式に集まることは、国際的な動物実験の原則、3R(Reduce, Replace, Refinement)の精神にもかなうことなのでは、漠然とですがそんな風に思っていました。

ところが「どうぶつのお墓をなぜつくるか-ペット埋葬の源流・動物塚」という本によると、人間以外の動物のため慰霊・供養をするという発想は日本以外の国では珍しく、動物塚を建立したり、動物のために慰霊祭を催したりする例もごく僅からしいのです(ペットも一緒の墓に埋葬してほしい、と希望する人はいるそうですが)。人と動物の境界、主従関係を明確にする宗教、価値観が多数派を占めているから、という理由のようです。

かたや日本では最先端の科学実験施設「SPring-8」にも、施設のために開通した道路で事故に遭うようになった動物たちのため、慰霊塚が建立されているのだとか。日本人独特の自然観、動物観が、思いがけない所に顔を覗かせることに驚かされます。

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